【創作民話・鬼の絵本】山下明生/梶山俊夫★1987年版「島ひきおに」

【創作民話・鬼の絵本】山下明生/梶山俊夫★1987年版「島ひきおに」
「島ひきおに」
山下明生/文 梶山俊夫/絵 偕成社


広い海の真ん中に小さな島があってひとりぼっちで鬼が住んでいました。
人恋しい鬼は、鳥や船をみかけると「こちゃきてあそんでいけ!」と
呼びます。
が、だれも寄りつきませんでした。

ある嵐の晩、助けを求めて鬼の島に漁船がやってきました。
人と暮らしたいと言い出す鬼に、びっくりした漁師たちは、
「あなたの島をひっぱってきたら一緒に暮らせます。」と
口からでまかせを言って、逃がしてもらいました。

つぎの日から、えんやこらと鬼は島をひっぱって海の中を歩き始めます。
やっと、人のいる浜辺にたどりついたのですが
鬼は人と暮らすことはかないませんでした。

愛に飢えている鬼、どこまで何をしに行くのか
深い海で、島をひく鬼の呼ぶ声だけが風がなくように聞こえてきます。

鬼は人の心の中に住んでいる「孤独」の象徴なのでしょうね。