里山に生きる動物たちと人間を描いた「ひとりぼっちのさいしゅうれっしゃ」いわむらかずお
「ひとりぼっちのさいしゅうれっしゃ」
いわむらかずお/作 偕成社
ねずみのおとうさん、おかあさん、おじいさん、おばあさん、きょうだい10ぴき。
大家族のねずみたちが力を合わせ自然の恵みの中で暮らす様子を描いた
「14ひきのシリーズ」全12冊(童心社)が人気のいわむらかずおさん。
「14ひきのあさごはん」で「絵本にっぽん賞」、「14ひきのやまいも」で
「小学館絵画賞」を受賞しています。
小さな動物や野の自然をあたたかな視点で描いた作品です。
それとは別の視点で里山に生きる動物たちと人間を描いた作品が
「ひとりぼっちのさいしゅうれっしゃ」です。
人間のエゴにより傷つけられ、心にしこりを持つ動物たちのつぶやきを
聞くことになったぼくのお話です。
ぼくはスケッチ旅行の旅先で、山奥へと向かう最終列車に乗り込みました。
ぽかぽかとあたたかな暖房のせいで、ぼくはすっかり眠ってしまいました。
気がつくと窓の外はまっくらやみで、にぎやかだった乗客たちはみんな降りてしまい
お客はぼくひとりだけになってしまいました。
ところが誰も乗っていないと思った座席から何やら話声が聞こえてきます。
なんと、ねずみが四匹座っていて、ぼくには気づかず熱心に話をしています。
その後も、いのしし、チャボとクジャク、くま、きつね、さるなど乗ってきて
列車のなかは動物たちでいっぱいになっていました。
動物たちは寄合に行くために列車に乗っているようです。
その寄合というのは、普段人間に虐げられている自分たちが
これからどうやって
人間に立ち向かっていくべきか話し合うというのです。
人間に弟を殺されたいのししや、人間に食べられそうになり逃げたチャボの話など
列車の中はすでに悲しい話がくりひろげられ、ぼくは人間であることを悟らてはいけないと
恐怖がだんだんと増してきます。
文だけのページと絵だけのページにわかれて、交互に繰り返される構成で
文は漆黒に塗られた黒地に白抜き文字でつづられていて、不穏な空気と
募るぼくの不安感が漂ってきます。
絵はまるで幻でも見ているかのような色味の少ない淡い色調で
ところどころに配した黒が、暗さを倍増させて不気味さを感じます。
人間のような恰好をした動物たちのそれぞれ異なる目線で
ページ毎に描かれている車内の様子は臨場感があります。
動物たちが列車を降り、ぼくのスリリングでな体験は終わりを告げ
車掌さんがやってきます。
見たことを話すと、車掌さんは寝ていて夢を見ていたと言い
ぼくが反論すると、いくら人が乗らないからといって動物は乗せないと言い
乗る人がいないこの山奥のローカル線はもうすぐ廃止になってしまうと
残念そうに言うので、ぼくはもう何も言えなくなります。
動物も人間も理不尽なことだらけで、やるせない思いにかられます。
けれど、自然の中を走るローカル線を舞台に動物たちの心のうちを描くという作品に
こめられたいわむらさんのやさしさにふれることができ救われた感じがします。
本作「ひとりぼっちのさいしゅうれっしゃ」は「サンケイ児童出版文化賞」を受賞しています。
全国学校図書館協議会選定図書、日本図書館協会選定図書にも選ばれています。
いわむらかずお/作 偕成社
ねずみのおとうさん、おかあさん、おじいさん、おばあさん、きょうだい10ぴき。
大家族のねずみたちが力を合わせ自然の恵みの中で暮らす様子を描いた
「14ひきのシリーズ」全12冊(童心社)が人気のいわむらかずおさん。
「14ひきのあさごはん」で「絵本にっぽん賞」、「14ひきのやまいも」で
「小学館絵画賞」を受賞しています。
小さな動物や野の自然をあたたかな視点で描いた作品です。
それとは別の視点で里山に生きる動物たちと人間を描いた作品が
「ひとりぼっちのさいしゅうれっしゃ」です。
人間のエゴにより傷つけられ、心にしこりを持つ動物たちのつぶやきを
聞くことになったぼくのお話です。
ぼくはスケッチ旅行の旅先で、山奥へと向かう最終列車に乗り込みました。
ぽかぽかとあたたかな暖房のせいで、ぼくはすっかり眠ってしまいました。
気がつくと窓の外はまっくらやみで、にぎやかだった乗客たちはみんな降りてしまい
お客はぼくひとりだけになってしまいました。
ところが誰も乗っていないと思った座席から何やら話声が聞こえてきます。
なんと、ねずみが四匹座っていて、ぼくには気づかず熱心に話をしています。
その後も、いのしし、チャボとクジャク、くま、きつね、さるなど乗ってきて
列車のなかは動物たちでいっぱいになっていました。
動物たちは寄合に行くために列車に乗っているようです。
その寄合というのは、普段人間に虐げられている自分たちが
これからどうやって
人間に立ち向かっていくべきか話し合うというのです。
人間に弟を殺されたいのししや、人間に食べられそうになり逃げたチャボの話など
列車の中はすでに悲しい話がくりひろげられ、ぼくは人間であることを悟らてはいけないと
恐怖がだんだんと増してきます。
文だけのページと絵だけのページにわかれて、交互に繰り返される構成で
文は漆黒に塗られた黒地に白抜き文字でつづられていて、不穏な空気と
募るぼくの不安感が漂ってきます。
絵はまるで幻でも見ているかのような色味の少ない淡い色調で
ところどころに配した黒が、暗さを倍増させて不気味さを感じます。
人間のような恰好をした動物たちのそれぞれ異なる目線で
ページ毎に描かれている車内の様子は臨場感があります。
動物たちが列車を降り、ぼくのスリリングでな体験は終わりを告げ
車掌さんがやってきます。
見たことを話すと、車掌さんは寝ていて夢を見ていたと言い
ぼくが反論すると、いくら人が乗らないからといって動物は乗せないと言い
乗る人がいないこの山奥のローカル線はもうすぐ廃止になってしまうと
残念そうに言うので、ぼくはもう何も言えなくなります。
動物も人間も理不尽なことだらけで、やるせない思いにかられます。
けれど、自然の中を走るローカル線を舞台に動物たちの心のうちを描くという作品に
こめられたいわむらさんのやさしさにふれることができ救われた感じがします。
本作「ひとりぼっちのさいしゅうれっしゃ」は「サンケイ児童出版文化賞」を受賞しています。
全国学校図書館協議会選定図書、日本図書館協会選定図書にも選ばれています。