アストリッド・リンドグレーン賞受賞のスウェーデンの児童文学作家、ウルフ・スタルクの絵本、幼年童話

アストリッド・リンドグレーン賞受賞のスウェーデンの児童文学作家、ウルフ・スタルクの絵本、幼年童話
スウェーデンを代表する児童文学作家、ウルフ・スタルクの作品、3冊を紹介します。
訳はすべて菱木晃子さんです。


「おじいちゃんの口笛」
 ウルフ・スタルク/作 アンナ・ヘグルンド/絵 菱木晃子/訳 ほるぷ出版


ウルフがおじいちゃんの話を得意げにしたら、おじいちゃんのいない
友だちのベッラは、とてもうらやましがりました。
そこでおじいちゃんをみつけにいこうと、ウルフはベッラを
老人ホームに誘いました。
ベッラは、出会ったニルスさんを自分のおじいちゃんに決めました。
ニルスさんも、無邪気に自分を慕ってくれるベッラに親しみを感じました。
そこから、三人の愉快であたたかな交流がはじまります。

ニルスさんは、大切なスカーフやネクタイで凧を作ってくれたり
口笛を教えてくれたりしました。
ふたりは、ニルスさんのために、遊び心いっぱいの特別な誕生日パーティーを
ひらきました。
ところがその後しばらくして、心臓が悪かったニルスさんは・・・

お葬式のあと、ふたりは凧をあげることにしました。
ふたりの心の中にやさしい気持ちを育てたニルスおじいちゃんは
さわやかな風になって、凧といっしょに天高くのぼっていったことでしょう。
少年たちと老人の一期一会を、スタルクは軽やかに描いています。


「ちいさくなったパパ」
 ウルフ・スタルク/作 はたこうしろう/絵 菱木晃子/訳 小峰書店


息子のトーマスくんに「どうして大人は遊ばないの?」と言われたパパ。
「もう一度子どもの時のようにしてください」と、流れ星に願います。
すると翌朝起きてびっくり。子どもになったパパは大はしゃぎ。
トーマスくんとも仲良しになり、ふたりで遊びはじめるのですが
子どもとしては、何をやってもだめで、次第に大人としてふるまってしまう
始末。そんな変な子どもに、トーマスくんは夜までつきあってくれます。
家に帰る途中、「ママはなんていうかな」とトーマスくん。
パパもだんだん不安になってきます。
その時、パパの体に異変が・・・

もしかしたら、いつもパパは遊んであげていると思っていたけれど
息子がパパと遊んでくれていたのかもしれませんね。

風変わりなエピソードをテンポよく描いています。


「うそつきの天才」
 ウルフ・スタルク/作 はたこうしろう/絵 菱木晃子/訳 小峰書店

    
テストでいつも落第点をとっているウルフ。
でもパパとママは優等生だと思っています。
答案用紙を見たという親のサインは、いつもウルフが真似して自分で
書いていたからです。
ところが、そのことが先生にばれてしまい、困ったウルフは家出することに。

家出から2日たった時、ウルフは警官に補導されます。
警官にまで大うそをついて、見知らぬ家に行き、見知らぬおばさんに
ママと抱きつくウルフ。
けれどすぐに、うそはばれて、家につれもどされます。
パパとママは怒らずにウルフを迎え入れてくれました。
「これからはほんとうのことを話すよ」と反省したウルフでしたが
結局、学校に行ったら友だちに家出のほら話をはじめるのでした。

二話目の「シェークvs.バナナ・スプリット」では、そんな少年ウルフが
ニキビのできるお年頃になった時のはなし。
ウルフは、作文にめざめ、ライバルのヨーランとシェークと
バナナ・スプリットを賭けて、毎回作文対決をします。
ある日、ウルフの作文を先生が大絶賛。
「身近に起こったことをそのまま書けばいい。話をつくる必要なない。」
と、信じて疑わない先生でしたが、その真相は・・・

訳者の菱木晃子さんの「あとがき」によれば、このショートストリー二編は
スタルクの作品の中でも、とりわけ自伝的色あいが濃い作品だそうです。
うそつきの天才ウルフは、想像力あふれる文学の道へすすんでいくことに
なるのです。
また、これらの作品はスタルクから直接いただいたもので、スウェーデンでは
未発表ということです!
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3冊とも、主人公が語りかけるスタイルになっていて、より身近に
いきいきと気持ちが伝わってきます。
スタルクのセンスの良いユーモアで楽しませてくれますが
中でも、ラストがとても良いと思います。
しみじみしたり、えっーとなったり、クスッと笑えたり
終わりよければ全てよし」ですね。

紹介した「おじいちゃんの口笛」(ほるぷ出版)で「ドイツ児童文学賞」を受賞。
「ぼくはジャガーだ」(佑学社・絶版)で「ニルス・ホルゲション賞」
(絵はアンナ・ヘグルンドで同作品で「エリサ・ベスコフ賞」受賞)
子どもの本に貢献した作家に贈られる「アストリッド・リンドグレーン賞」
(Raben & Sjogren Astrid Lindgren priset)も受賞しています。